小児におけるインフルエンザとアセトアミノフェンの関係について
インフルエンザは主に冬季に流行するウイルス感染症です。
インフルエンザウイルスに感染すると高熱、咳、のどの痛み、関節痛、筋肉痛などを自覚し、一般的に風邪よりも症状が強く出ることが多いです。また、時に重症化して肺炎や脳炎などの合併症を引き起こし、命に関わることもあります。
インフルエンザの治療には、タミフルRやリレンザR、ゾフルーザR、イナビルRなどの抗インフルエンザ薬が用いられますが、これらの薬はウイルスの増殖を抑えるものであり、直接熱を下げる効果はありませんし、高い効果を得るには発症から早いタイミング(48時間以内)に開始する必要があります。
そこで、インフルエンザに伴う発熱や痛みに対しては解熱鎮痛剤が併用されることが多いですが、これらの薬の中には小児のインフルエンザと相性が悪いとされるものもあります。
この記事では、小児のインフルエンザに使用できる解熱剤として比較的安全なアセトアミノフェンという薬について、その特徴や注意点を解説します。
アセトアミノフェンとは?
アセトアミノフェンは解熱鎮痛剤と呼ばれる薬の一種です。その名の通り、熱を下げる「解熱剤」としての効果を持つと同時に、痛みをとる「鎮痛剤」としての働きも持っています。
熱を下げる仕組みとしては、脳にある体温を調整する部位に働きかけて体の血管を拡張させることで熱を外に逃がし、体温を下げるとされています。
また、痛みを引き起こす物質が体内で生成されるのを阻害することで、痛み止めとしても働きます。
平熱の方が飲んでも過剰に熱が下がることはないので、痛み止めだけとして使うこともできますし、逆に解熱剤だけとして使うこともできる薬です。
そのため、熱や頭痛、歯痛、生理痛、関節痛など、様々な場面で昔から使われています。
アセトアミノフェンとは一般名(薬の成分そのものの名前)であり、製品名としてはカロナールRやアンヒバR、アルピニーRなどがあります。
特長として、他の種類の痛み止めにたびたび認められる胃腸・腎臓障害や胎児への影響といった副作用のリスクが比較的少ないため、高齢者や乳幼児、妊婦などの解熱や鎮痛に多く用いられています。
ただし、どの薬にも言えることですが用法用量は必ず守りましょう。アセトアミノフェンは肝臓で処理されるため、過剰に服用すると肝臓に障害を起こすことがあります。また、同様に肝臓で処理されるアルコールとは相性が良くないため、飲酒前後の服用は避けるべきです。
小児のインフルエンザではアセトアミノフェンがおすすめ
前述したように、インフルエンザ感染症では発熱や色々な痛みを伴うため、アセトアミノフェンやその他の解熱鎮痛薬を処方される機会も多いと思います。
しかし、小児のインフルエンザに伴う発熱に対しては、解熱鎮痛剤としてアセトアミノフェンが推奨されています。その理由は、インフルエンザ脳症という重篤な合併症の発症・死亡リスクが高くなるとされているからです。
まとめ
インフルエンザはウイルス感染症であり、高熱や咳などの症状が出ます。インフルエンザの治療には、抗インフルエンザ薬が用いられますが、これらの薬は熱を下げる効果はありません。
そこで、インフルエンザに伴う発熱や痛みに対しては、解熱鎮痛剤が使用されます。
しかし、解熱鎮痛剤の中には小児のインフルエンザの際には避けるべきものがあり、その一方で安全に使用できる薬剤としてアセトアミノフェンがあります。
アセトアミノフェンは副作用のリスクが少なく、高齢者や乳幼児、妊婦などにも安全に使用できます。お子さんがインフルエンザに罹患した場合や、インフルエンザに罹患している可能性がある場合は、解熱鎮痛剤としてアセトアミノフェンがおすすめです。
一方、成人の場合にはインフルエンザ脳症やライ症候群のリスクが低いため、アセトアミノフェン以外の解熱鎮痛剤も使用されます。
また、そもそもはインフルエンザにかからないことが大切です。
インフルエンザの予防には、インフルエンザワクチンの接種や、手洗いやうがいなどの基本的な感染対策が重要です。インフルエンザが疑われる症状が出た場合は自己判断を行わずに早めに医療機関を受診し、医師の指示に従って適切な治療を受けてください。